2020/11/28
「ヒトラーへの285枚の葉書」
10月✕日
すき焼きとクラフトビールで腹ごしらえを済ませ…
ホームシアターへと向かいました…
この日は「ヒトラーへの285枚の葉書」2016年/ドイツ映画
ナチスの蛮行はあまりにも罪深く、同朋にも鬱々たる爪痕を残していた。
オットー夫妻は最愛のひとり息子を戦争で失う。
父親は息子を戦地へと送り込んだ軍部を恨み、密かに体制批判の葉書を書いては市井の至る所にばらまく。
いつしかその数285枚を数えていた。
あるとき遂にその日がやってきた。
父親の違背が警察や軍部の知るところとなり、血道を上げた犯人探しが始まるのであった。
そして犯人が挙がったあとに待ち構える運命とは…。
父親役はブレンダン・グリーソンだ。
抑制の効いた重厚な演技で、妻を演じたオスカー女優・エマ・トンプソンに一歩も引けを取っていなかった。
このふたりの演技が監督経験の浅いヴァンサン・ペレーズの演出を二段階特進させていた。
前半はゆっくりしたペースで進むが、当局が葉書の犯人探しに入るところから一気にギアチェンジがかかり、サスペンスが高まった。
またクリストフ・ボーカルヌのカメラワークも冴えを見せ、特に冒頭の息子が敵弾の犠牲になるシーンの映像はこの作品の白眉と言ってもよかった。
ファーストシーンで私の心は掴まれたのであった。
「息子を捧げたんだ。これ以上の寄付があるか?」。オットーの台詞は胸に迫った。
恐らくこの夫婦の人生を刻む時計の針は、息子を失った瞬間に止っていたのだろう。
コクのあるシングルモルトスコッチのような作品である。
3.8点
ノエル
「ボクはおとうたんに285枚のファンレターを書こうと思ってるんだじょ…字書けないけど…」