2020/11/26
「鉄くず拾いの物語」
10月✕日
シュー様のオススメでホットプレートを使ったチーズフォンデュ。
めっちゃ美味しくて白ワインがすすみましたよ。
ホームシアターは「鉄くず拾いの物語」2013年/
ボスニア・ヘルツェゴビナ・フランス・スロベニア合作の作品を観る。
この物語はボスニアに暮らすある家族に起きた実話である。
そして当事者自身が本人役で出演している実験的映画でもある。
この民族にのしかかる貧困と不幸の闇は果てしなく深い。
そこにはひと粒の砂ほどの希望さえ見えない。
実際、映画の初めから終わりまで、登場人物の笑顔を観ることはなかった。
主人公のナジフは解体現場で働く日雇い労働者で、報酬もスズメの涙ほどだ。
極貧の生活の中で妻が産気づく。
しかし医療費を払う余裕がない上、彼女が被差別民族であるロマ族であるがために病院は冷たく扉を閉ざす。
結局妻の実家の施しを受けなんとか手術は成功するのであったが、ナジフ家族の前には望洋たる暗黒の日々が広がっているのであった。
ラストは印象に残る。
雪が降ったある日、ナジフは指がちぎれるような寒さに耐えながら薪を割る。
そして、それを両脇に抱えて家に入る。
家の中には横たわる妻の無表情だけがあり、聴こえてくるのは暖炉で燃える蒔の音と、犬の遠吠えだけであった。
それを観客に見せつけながら映画は静かに終わる。
この作品はベルリン映画祭で三冠に輝き、ナジフ・ムジチもデビュー戦ながら各映画祭で主演賞を総なめにすると言う成功を収めたのであるが、そのことがあだとなり、彼はねたみからくる執拗な迫害を受け、最期は哀れな末路を辿ったと言う救いようのないオチまでついている。
「神はどうして貧しい者を苦しめるんだ」。
劇中でのナジフの台詞が虚しく響いてくる作品だった。
鑑賞ノートをつけながら画面に食い入る私。
ノエル
「毛布をかぶりながら画面に食い入ったじょ…」