2017/04/25
ある理容師の葬儀
梅もほころび 寒さ厳しい中にも春の足音が聞こえ始めた日の朝
ひとりの理容師が84年の人生に幕を下ろした
天草で農業や漁業を生業とする家に生まれた
5男2女の三番目・次男だった
中学を卒業すると家業を手伝いながら成長し
二十歳になる頃 博多に出て理容師の修業に入った
8年ほど経った頃だろうか 宮崎に移り住み小さなお店を構えた
その城は努力の結晶だった
店は故人の人柄と技術に支えられ繁盛した
あれから60年が過ぎた
持病を抱えるようにもなり 店は息子にゆだねた
忙しい毎日だったが 時間を見つけては家族旅行に行った
車に乗って故郷天草などを回ったことが忘れられない
お客との会話が何よりの楽しみだっただけに
彼の地でも先だった常連たちと再会し
積もる話に花を咲かせることだろう
ひとつの道を究めた人生
それは決して平坦な道のりではなかったが
想い出と言う小さな花々が路傍を飾っていた
合掌
式場には故人愛用の商売道具が飾られた
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